伊藤 阿二子 河面のさざなみのひとつひとつに 茜色をうつして 岸辺の家々を青紫のシルエットに浮かび上がらせ 人影はなく 無音のゆうべ だれひとりいなくなった河原に 庭のように組まれた石たち 上流から来て引っかかった木の枝 河のしごとは水を運ぶことだから この町にだれもいなくなっても、流れはとまらない 夕日のしごとは西にしずむことだろうから 影を引くひとも犬もいなくても 天空を切なく染めて あかあかと 日は 落ちてゆく
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