絵の家

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6月の詩

「師」

                             伊藤 阿二子
涸れ川の
ちいさな石橋のたもとで
師に出会った

十四・五歳の頃 
扇状地帯の街の川沿いを
毎朝駆けるように登校した
舗装もまだ無い蒲公英咲く道
転んで擦りむいた膝に蓬の葉を塗って

遠い日に
ひょろりと瘦せて不器用だった子を
記憶を手繰り寄せ
今日に結び付け
老いた師が口を綻ばせ

 ―思っていたよりずっと頑張っているね

 思い描いたようになる子
 よくもわるくも予想を裏切る子
 沢山の子を見続けてきたけれど
 自分より先に旅立ってしまう子も
 
微笑はやや口惜し気で
あと少しは師も 自分にも
残された時があると疑わず
軽い会釈で 別れた

幾ばくもなく 訃報を聞いた


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