伊藤 阿二子
涸れ川の
ちいさな石橋のたもとで
師に出会った
十四・五歳の頃
扇状地帯の街の川沿いを
毎朝駆けるように登校した
舗装もまだ無い蒲公英咲く道
転んで擦りむいた膝に蓬の葉を塗って
遠い日に
ひょろりと瘦せて不器用だった子を
記憶を手繰り寄せ
今日に結び付け
老いた師が口を綻ばせ
―思っていたよりずっと頑張っているね
思い描いたようになる子
よくもわるくも予想を裏切る子
沢山の子を見続けてきたけれど
自分より先に旅立ってしまう子も
微笑はやや口惜し気で
あと少しは師も 自分にも
残された時があると疑わず
軽い会釈で 別れた
幾ばくもなく 訃報を聞いた