絵の家

今月の詩

9月の詩

「河のこと」

                             伊藤 阿二子
河面のさざなみのひとつひとつに
茜色をうつして
岸辺の家々を青紫のシルエットに浮かび上がらせ
人影はなく
無音のゆうべ

だれひとりいなくなった河原に
庭のように組まれた石たち
上流から来て引っかかった木の枝

河のしごとは水を運ぶことだから
この町にだれもいなくなっても、流れはとまらない

夕日のしごとは西にしずむことだろうから
影を引くひとも犬もいなくても
天空を切なく染めて
あかあかと
日は
落ちてゆく


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